『螺旋ノ彼方』世界観設定集

2 神々と護ル者たち


<最高神・準最高神>
 最高神は基本として人間と関わりをもたない。準最高神はごく稀に下界に多大なる影響を及ぼすが、その場合は例外なく世界は混乱している(3の項『代表神話』(3)参照)
 なお、準最高神をその身に宿したものは、あまりに強い力が自我を壊し、器は神のものとなってしまう。つまり器は生き物として機能しなくなるため、神を器から出す方法は壊すしかない。
※彼らの名称は古代語表記となっており、現代の綴りとは異なっている。他の神と異なり、ハイフンで区切られた単語一つ一つに意味があるらしいが、詳しいことは未だ分かっていない。

・最高神:
創造神 テラレシート(Te-ra-lecit)
 人間にはけして姿を見せない、螺旋ノ彼方の創造主。世界の創造をたった一人で成し遂げた後、神ノ国にある霊峰の頂上に戻って人々を見守っているという。古代の壁画では、腕を六本持ち、頭からうすぎぬを被った若者として描かれている。男性女性、どちらの姿もあることから、両性具有だったのではないかとの説もある。
 創世神話(3の項『代表神話』(1)参照)以外での話はあまり語り継がれてはいないゆえ「創造神は存在しない」という説も囁かれているが、真相はまさしく「神のみぞ知る」。

・準最高神:
破壊神 シュラノカミ(Shur-a-nok-amy)
再生神 リンネ(Rin-n-ne)

 若い男の姿で描かれる、表裏一体の神。破壊と再生を、そして世界の根幹を成す魂の流れを管理する役目を担う。創造神の創った生命を、約500年程度のサイクルで循環させている。破壊神は黒々とした髪と瞳、再生神は白々とした髪と瞳で描かれ、その姿は全く同じ。どちらがいなくなっても世界の均衡が乱れる。
 万物は破壊神の手によって無へと返され、再生神の手によって有となる。つまり全ての存在は無より有へ、有より無への循環を繰り返していると考えられている。どちらかが欠けてもこのサイクルは行われず、結果として魂たちは過去を無に帰されず、新たなる命として再生されないまま、永遠に彷徨い続けるとも言われている。
 この神々の存在は世界の根幹に関わるため、必要に迫られたとき以外、すなわち創造神の許しがなければ、神ノ国にある社より出ることを許されていないという。
 創世神話にて語られる以外には登場しないが、草ノ国に住む遊牧民族『宿シ身ノ民』に伝わる神話には重大な事実をもって描かれているという。しかしこの事実は民の間でのみ語られ、外の人間には決して知らせてはいけないと戒められている。

<上級神>
 以下の神々は人間の世界に深く関わっている。

太陽と光の神 クシイ(Ksii)
――管理せし国は「聖ノ国」(せい の くに) 螺旋の中央に近き聖なる場所
 世を照らし、邪なるものをうち払う浄化の力を持った太陽の化身。まばゆい金の髪を持ち、金色の鎧を身にまとい大剣を手にした美しき乙女の姿で描かれる。世界の創造時に一番初めに生まれた神でもあり、上級神の指導者でもある。また正義と力の象徴でもあり、世界中に信仰者が多い神でもある。
 「聖ノ国」の王家の証だが、国のどこかで生きているという人獣『聖馬ノ民』の守り神として伝えられている。
 邪神ゼプトと相対し、優しき狩人サーヴェルの力を借りて邪神を封じた『千年戦争』はあまりにも有名な英雄譚であり、今もなお愛されている神話の一つである。(3の項『代表神話』(2)参照)

闇と夢の神 ミュー(Mew)
――管理せし国は「夜ノ国」(や の くに)常夜に浸かる螺旋の最果て
 世を照らし、夢の世界との境となる闇を連れてくる月の化身。艶やかな紫闇の髪を持ち、漆黒の薄絹にトコユメバナをあしらった杖を手にした、クシイと同じ姿で描かれる。世界の創造時に一番初めに生まれた神であり、クシイの対となる神である。安寧の象徴でもあり、魔術の象徴でもある。
 トコユメバナは月光の下でしか咲かない魔花であり、枕元に置いておけばミューの加護を受けて悪夢を見ないとされる。またこの花を持っていれば、夜徘徊する悪霊などから身を守れるという。信者や魔術師などは、トコユメバナをイメージした細工物を持ったり、杖にトコユメバナをあしらったりする。

森林と静寂の神 ファイ(Fai)
――管理せし国は「機ノ国」(き の くに) 森林と共にある技術の苗床
 育まれた大地の恵みを生き物に分け与える森林の化身。深緑の髪を持ち、足を大地に深く根ざした男性の姿で描かれる。生命の心を鎮めて安らかな時をもたらす。静寂の象徴でもあり、木々を初めとする大地に根ざすものたちの象徴でもある。森林に住まうものたちを大事にし、平和を愛する優しい神でもあるため、平和と慈愛の象徴としても描かれる。彼の手に握られたミズノキの枝とその果実は、大地のもたらす恵みの表れである。
 「機ノ国」にある大森林地帯で、木々と同化し生きてきた『森ノ民』の守り神として愛されている。
 ミズノキは幹や果実に豊富な水分を含む植物であり、地下水を吸い上げて幹に溜め込むつくりになっている。水分さえあれば生きていけるため、砂漠地帯では「ファイの加護」と呼ばれることがある。

風と伝令の神 ヘクト(Hect)
――管理せし国は「草ノ国」(そう の くに) 風走る広大な草の海
 空気の流れに乗って人々の声を運ぶ風の化身。青味を帯びた淡い碧の髪を持ち、手首と足首に羽根を生やした幼い娘の姿で描かれる。世界中を駆けて人々の声を運び、また人々をクシイの光へ導く先導者でもある。自由の象徴であり、旅人の守護者とも呼ばれる。風の内に真実を隠す。
 彼女の手にした横笛の音を聴いたものは、風に乗って運ばれてきた伝言を聞くことができるという。ゆえに、手紙には無事に届くよう祈りを込めて、横笛の細工が施されたコインを入れる風習がある。
 「草ノ国」の草原地帯に生きる遊牧民族『宿シ身ノ民』の守り神として、奔放に生きる彼らに愛されている。

焔と灼熱の神 ウプシロン(Upshron)
――管理せし国は「砂ノ国」(さ の くに) 白亜の砂に包まれた灼熱の地
 生命の維持するための熱を司る焔の化身。深紅の髪と、焔を宿した火蜥蜴の下半身を持つ幼い少年の姿で描かれる。炎の力強さを人々へ届け、生命の焔をも燃え上がらせる役割を担う。同時に人々の闘志をもたぎらせ、奮い立たせる。戦士の守護者とも呼ばれ、また勇気の象徴でもある。
 両足に絡んだ長い鎖は、焔の持つ凶暴さを自ら戒めるための証であり、転じて人々にその危険性を知らしめている証でもある。ゆえに家に火を放った罪人の足にはかせが嵌められる。
 「砂ノ国」の人口のほぼ大半を占める『火鱗(かりん)ノ民』の守り神として、人々に祭られている。

水と冷潤の神 シータ(Sita)
――管理せし国は「霧ノ国」(む の くに) 清らなる水に抱かれし都
 生命を維持するための潤いを司る水の化身。深い蒼の髪と魚の尾を持つ若い男の姿で描かれる。あらゆる生き物に水の恵みを与え、生命が枯れぬように潤わせる役割を担う。同時に人々を癒し、心を鎮めて物事の真実を捉えられるようにする。手にされた杯はあふれ出る水と知性の証であり、知性の象徴でもあるため、真理の探究者の守護者と呼ばれている。
 「霧ノ国」の険しい山に暮らす人獣『銀虎ノ民』の守り神として祀られている。

善の心の神シグマ(Shigma)
――『千年戦争』にて消滅した女神
 元は人間の善を行う心を促進させていた神だったが、ゼプトが反旗を翻した際真っ先に消されてしまった。シグマが消滅したことにより、それ以降人々の心は時折欲望に負け、抑えきれなくなる者まで現れるようになったという。

邪神ゼプト(Zept)
――『千年戦争』にて反旗を翻した裏切りの神
 元はシグマの対となっていた、人間の欲望を抑える役割の神だった。が、いつの頃からかその役に不満を覚え、ついには神々を裏切って戦いを始めてしまう。邪神となったゼプトと神々の戦いは千年もの間続いたが、ただ一人神々へ味方した狩人サーヴェルと光の女神クシイの手により封印された。(3の項『代表神話』(2)参照)

<護ル者たち>
 護ル者たちは二体存在し、上級神と中下級神の間に位置する創造神の創り賜いし意志ある獣たちのことである。

『翼持チ護ル空ノ父』 ヴィタ(Vita)
――管理せし国は「飛ノ国」(ひ の くに) 翼ある者の故郷
 巨大な鳥の姿をした護ル者のうち一体。我々の世界で言う鷲や鷹の姿に似ているが、尾羽が素晴らしく長い。翼は四枚あり、「飛ノ国」の民である翼羽(よくう)ノ民の祖とも言われている。ありとあらゆる翼を持つ者たちを守護し、空を駆ける弱き者たちを守護する。

『鱗持チ護ル海ノ母』アルファ(Alpha)
――管理せし国は「流ノ国」(りゅう の くに) 深海に眠る理想郷
 巨大な水蛇の姿をした護ル者のうち一体。美しい流れを描く体つきに、鱗は日の光によって様々な色に輝くという。水の神シータに代わって海を守護し、海を渡るか弱き者たちを守護する。なお、「流ノ国」は幻の国とされ、伝説上でも数えるほどしか文献が存在しないが、深海に沈んだ古の都であり、かつて人々が夢見た理想郷だということだけが分かっている。



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