『螺旋ノ彼方』世界観設定集

4 種族


今現在知られている代表的な種族は以下の通りだが、これ以外にも細かい種族がいるようだ。

人間
 我々の世界で言う人間とほぼ大差はなく、世界の中でもっとも多い。神々の力の一部を借りる「奇跡」を扱える者も多く存在する。神の力を借りて、「奇跡」の力で傷を治せるものを「治癒師(リカバリング)」と呼び、大変に重宝がられる。余談だが、「奇跡」から魔術を構成させ、飛躍的に回復能力を増加させた魔術師を「治療術師(ヒーリング)」と呼ぶこともある。身体能力はオールマイティであり、良くも悪くも器用。

半獣
 体の上半身または下半身が獣の姿をしている者たちのこと。人間の次に多い。半獣とは言うが、人間と獣のハーフというわけではなく、元々からそういう種族。局部ではなく、ある程度の範囲にわたって獣の姿をしている(例えば頭部から首までが狼、体毛は肩口あたりまで広がっており尻尾もあるが、他の部分は人間、など)感覚も獣の種類に応じたものに突出しているが、身体能力は肉食草食で分かれる。肉食は主に肉体労働を得意とし、草食動物は主に頭脳労働を得意とする。
 余談だが、種類の異なる半獣同士が婚姻を結ぶと、その子どもは両親のどちらかと同じ姿をしている。遺伝子情報の優勢にあたる種類の半獣の特徴が、そのまま子どもに受け継がれるようだ。

宿シ身ノ民(またの名を神ノ器
 創造神が人と神を繋ぐために生み出した種族。「草ノ国」の大草原で遊牧生活を送って暮らしている。その名の通り、己の体に神を宿すことができる。巫女は島を守る神のみをその身に宿すが、宿シ身ノ民には創造神を除く全ての神が宿せる。紅の髪と色違いの瞳、体に走る暗緑色の模様を持つ。瞳の色は右が紅で左が蒼だが、宿す神の階級が高いものほど色の区別がはっきりする(弱ければ両目が紫に見える)。同様に体の紋様が複雑であればあるほど、高位の神が宿せる。なお神を宿すと、普段は紅をしている右目の色が変化する。破壊神を宿すことができる者が稀に生まれるが、そうした子どもは「イユクの器」と呼ばれ、イユクの悲劇を繰り返さないために人間から隠して育てることになっている。
 また「ヌシ」と呼ばれる者に従属し、「ヌシ」でなければ民に神を降ろすことはできない。額の中央にある紋(円の中央に点を打った紋)は、いわゆる「門」の役目となっており、「ヌシ」の儀式は「ヌシ」候補がそこに指を置いて執り行う。指先と「門」を通じて関係を結び、あるいは関係を解除する。なお新しく「ヌシ」になる場合には、前の「ヌシ」よりも潜在的な力が勝ればなることができる。
 絶対不可侵である巫女とは異なり、宿シ身ノ民には人権が保障されていないため、集落に入り込んでは拉致して人身売買をする者も多い。一部の人間の心無い行為のため、宿シ身ノ民は一時期人の前から姿を消し、伝説の民とまで呼ばれていた。

森ノ民
 「機ノ国」のほぼ大部分を占める森林地帯に暮らす一族。その魂と肉体を樹木と一体化させ、樹が枯れない限り生き続ける長命種族でもある。森林の神ファイの加護を受け、森林の奥深くで静かに暮らしていた。色味の淡い緑色の髪、光の加減によって色味を変える不思議な瞳を持つ。寡黙で心優しく、生きるものを愛する穏やかな種族でもあり、争いを厭う。森の植物を操り、侵入者を阻んだり、あるいは薬草を成長させて使用したりもできる。
 数年前、「機ノ国」の国王が森に攻め込んできた際、一族のほぼ全てが殺されてしまった。その時に一族の長でもある巫女が命を賭して結界を張ったため、誰も入ることができなくなった。現在『森ノ民』と呼ばれる者はただ一人、巫女の娘のみであるが、行方が分からなくなっている。森林地帯はいつしか「眠レル森」と呼ばれるようになった。

人獣
 人間の上半身と獣の肢体を持った、半獣とは全く別の種族。白馬の胴体に螺旋の一角を持つ「聖ノ国」の聖馬ノ民と、銀の毛並みに蒼い縞の入った虎の胴体を持つ「霧ノ国」の銀虎ノ民が確認されているが、それ以外にいるのか、そもそも彼らがどのような生活をしているのか、詳しいことは一切分かっていない。
 外の世界に迷い出すものも稀にいるが、心無い一部の人間によって手酷い仕打ちを受けて力尽きることがほとんどだという。

火鱗ノ民
 「砂ノ国」の人口の大半を占める一族。下半身部分が紅の鱗に覆われた火蜥蜴の種族である。火や暑さなど、熱に強く、逆に冷気には弱い。浅黒い肌に目の覚めるほど鮮やかな髪をした人々が多く、皆が皆陽気。と同時に皆が皆熱血で、皆が皆喧嘩っ早いという困った一族でもある。
 お祭好きで騒ぎが好き、そのせいか、酒を醸す技術などが発達している。お祭好きも手伝って、踊りや愉快な歌も発達していった。当然と言えば当然だが、考えることはちょっと苦手。その腕っ節を生かしてハンターになる者も多いが、暑い夏限定だったり、暑い場所限定でという制約がついてしまうため、少々難儀もするようである。
 王家は火鱗ノ民で代々治めてきており、先住民が政治を完全に行っているという事例がほとんど無い螺旋ノ彼方の国家では珍しい部類に入る。

翼羽ノ民
 「飛ノ国」で暮らしている有翼人。翼を四枚持ち、それを駆使して空を飛ぶことができる。翼の色は純白が大半で、時折黒や灰色、茶の斑などもいるらしい。暗蒼の翼は邪神の力に染まった証ゆえ、堕ちた者として忌み嫌われている。余談だが、翼を持つ生き物は三種類しかおらず、鳥類、飛竜と翼羽ノ民のみである。
 思慮深く知識欲が旺盛なため、学問などで著名になる者が多い。下界に出て各地を遊学する者もいるが、最近は空に魔物が出ることもあってか、単身で降りることはほとんどないという。なお「飛ノ国」に行く手段は、下界から出ている飛竜の車「飛竜ノ道」を利用するしかない。
 男女の区別があまりなく、男性でも女性でも美しい顔立ちをしている。



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