六-liu- 


 勢いよく地を蹴り、女へ躍りかかる。背後へ回り込み放った足払いは、しかし難なく回避された。
「あらあら、坊やったら。戻ってきちゃったの? せっかく見逃してあげたのに」
 黒幻の首を捕らえたまま、女は言う。幼子をあやすかのような優しい口調だった。
「おとなしく逃げていたほうがよかったのではなくて? そのほうが、あなたのためになるわ」
 虎牙は無言のまま、女の腕へ拳をたたきつけた。怯んだ女が力を緩める。無造作に落とされ、黒幻が地に転がった。その体を引っ張り込み、少し離れた場所へ降ろす。
 背を壁へもたせかける。黒幻は未だ虚空を仰いでいた。改めて女に向き直る。服の乱れは一切無い。指と袖口を染める紅だけが、唯一先刻と違う。
「まあ、おいたが過ぎるわね」
 可憐な唇はあくまで笑みの形を取ったままである。が、澄んだ双眸には殺意の鋭い光が灯っていた。
「そんなにこの男が気になるの? 守ってあげたいとか、そんな馬鹿げたことをお考えかしら?」
「違う」
 虎牙は女をにらみ返す。
「俺の大事なもんを奪った奴なんか、守りたくなんてないね」
「なら、放っておけばよかったじゃない。わざわざ戻ってこないで、そのままどこかへ行ってしまえばよかったんだわ」
 ついさっきまで、ほんの数刻前まではそう思っていた。虎牙の視界の端で、黒幻が小さく身じろぎする。
「あいつのしたことは、絶対に許せねぇ。大事なもんが奪われた、だから奪い返してもいいなんて、そんな馬鹿な話があるか。自分が過去にひどいことされたからって、それが免罪符になるなんてこと、あるわけがねぇだろうが。あっちゃならねぇことだ。許せねぇし、許せることでもねぇ。だから」
 乾いた唇を湿らせ、息を継ぐ。何かを伝えるのは得意ではない。妖魔を相手にするのもおかしな話だが、口に出して確認したい気がしたのだ。
 声を少しだけ溜め、あまり多くない語彙から必要なものを拾い上げていく。
「だから、後悔させてやるんだ。人殺しをするってこたぁ、そいつの命奪ったってぇ責任背負うことだ。それが分からねぇで人殺す奴らは、どうしようもねぇ屑だ」
 腹が立ったから殺した。気に入らないから殺した。自分は悪くない、あっちが悪い。反省していない者には、何を言っても無駄だ。どれほど言葉を重ねても、どれほど責め立ててみても、理解すらできないのだから。
「だが生憎と、あいつは後悔してるみたいでよ」
 再度奥を見やる。体勢は依然として変わっていなかった。信じて、裏切られるばかりだったのだろうか。ふとそんなことを考えながら、虎牙は言葉を進めた。
「後悔してる奴は、自分の罪で潰れちまう。潰れちまえば何をするかって、楽になりたいから自殺する。死ぬのは簡単だ。後始末なんか考えねぇでいいからな」
『人間殺すってことは、自分と同じ意志のある生き物を殺すってことだ。だから怖い。だから重い。だから怯える。だから、抱えた重さから逃げようとするんだ』
 そう言った後、勝手だよなあと呟いた龍牙の横顔は、今も記憶に鮮やかだった。
 人間は人間の重みを抱えたくない。黒幻を化け物と呼んだのは、万が一に殺したときの罪悪感を失くすためだったのかもしれない。臆病さが産んだ身勝手な転嫁。自分もそうだったのだと、ひそかに自嘲する。
「そうじゃなくて……生きて生きて生き続けて、死ぬまで殺した奴らのことを後悔し続けるのが、償いなんじゃねぇのか。それしか償う方法なんて、無いんじゃねぇか」
 本当は償い切れるはずなどない。だが逃げてしまうよりも、放棄してしまうよりも、あえて立ち向かったほうがいいと感じるのは、自分が未だ世間知らずだからなのか。
 胸中の問いを察したか、女が柔らかく微笑する。
「お馬鹿さんね」
 人の姿を借りた妖魔は、ひどく優しげに嘲った。
「あなたはここで生きてきたのでしょう? 裏切って裏切られて、傷ついて傷つけられて。他人は二の次、自分が一番。ここはそういう世界でしょう? 他人に関わっていたら、自分が死ぬかもしれないのよ」
「分かってるよ、分かってるさ」
 一つ頭を振り、虎牙は苦々しく肯定した。
 痛いほどに身に染みている、この世界で生きていくための掟。他人を守る前に自分を守れ。他人に関与する前に、自分の身を何とかしろ。他人は二の次、自分が一番。
 それでも。甘いと罵られても嗤われても、他人を守ってきた強い男を知っている。自分の意志を貫いた男を知っている。だから自分も、意志を貫く。これを選んだのは、他でもなく自分だから。
「でも。後悔して償いたいって思ってる奴に、手ぇ貸して手伝ってやってもいいだろ」
「くだらないわ」
 かんざしを一つ鳴らして、女が両手を広げた。紅に色づいた手が、粘ついた光沢を放っている。犠牲者たちのおびただしいそれは、仮の姿をした妖の柔らかな手を、しなやかな指を、禍々しく染め上げていた。
「所詮は他人事じゃない。放っておけば勝手に自滅するこの男を、どうして助けようとするの?」
「助けるんじゃねぇ」
 距離を一歩、詰めた。
「死なせて楽にさせたくねぇんだって言ってるだろ。自分のしたことを後悔させて、その後悔背負って生きられるようにする。そいつが勝手にしろって言ったから、俺が勝手にするだけだ」
「あらあら、大した御託と立派な覚悟ね。感心しちゃうわ」
 ふわりと身を翻して、女は距離を取った。
「でもいいの? あなた、ここで私を殺してごらんなさいよ。どうなるか分かってる? 彼の大事なものを、あなたは奪うことになるのよ。そうしたら、彼は完全に狂ってしまうでしょうね。あなたはその代償を背負い切れるの? 他人を殺したと同然の罪を、あなたは背負い切れるのかしら」
 虎牙は唇を噛み締め、黒幻を眺めた。笑む女を通り越した延長線上、彼は静かに空を見ている。
 今目の前にいる妖魔は、黒幻の妻の姿をしている。追い詰められて、奪われたものが目の前にいる。その心地はどのようなものなのか。虎牙には分からない。
 だが、失ったものが帰って来たならば、嬉しいに決まっている。二度目など本来は無い、偽りのものであったとしても。
「そのときはそのときだ。てめぇを殺してこいつが狂ったら、代償は引き受ける。一切合財全部だ。こいつを狂わせた責任を背負って、一生生きてやる。俺が選んだ結果でそうなるなら、そうするのは当然だろ」
 自分の意志を貫くことに、自分が生きていくことに、妥協なんてしたくない。口に出して初めて、虎牙は自分がどうしたいのかに得心がいった。
「勇ましいわね。どうなっても知らないわよ。それにね、坊や」
 女の笑みが、歪んだ。
「あなたが生きてあの男も生きることは、どの道無理よ。あなたたちはここで死んで、私に食われる運命なのだから」
「寝言言いやがるな。妖魔っちゃ皆そうなんか? 俺は運命なんざ端から信じてないね」
 虎牙もまた、笑ってみせる。
「もしもそれが本当でも、そいつをぶち壊して突っ走るだけよ」
 行く先は決まった。あとはそれを目指して進むだけ。虎牙の声に応えるように、黒幻がわずかに目を向けた。

 目の前の女は、改めて見ても妖魔と思えぬほど人間らしかった。格好こそ時代錯誤気味ではあるが、それを除けば普通の人間と全く同じ身体のつくりをしている。
 だからこそ、やりにくかった。頭では分かっているのに、虎牙の体が無意識の内に殺すことを拒絶してしまう。
「ねえ、坊や。やりあうならやりあうで、もっと楽しみましょうよ」
 妖魔は揶揄を含めた声で笑う。瞳を細める仕草は、やはり人間のそれと何ら変わりは無かった。
「坊やは本気じゃないわね。私を殺すことが怖いの? それとも、あの男を壊すことが怖いのかしら?」
 振るう腕が、躊躇する。彼女の問いは、双方において答えを穿っていた。
 相手が人間の姿をしている。殺しをしないという誓いを破ってしまうようで、龍牙を殺したときが嫌でも蘇ってきて、恐ろしかった。自分のした責任を負うとは言ったが、人一人の人生を滅茶苦茶にすることはやはり恐ろしかった。
 ――これでは黒幻が臆病と嘲るのも、無理は無い。だがここで逃げれば、今まで並べてきた誓いも言葉も、全て嘘になってしまう。それだけは絶対にしたくない。だからなおさら退くわけにはいかない。
 引きかけた腰を落として踏みとどまったとき、するりと細い影が虎牙の懐にもぐりこんできた。視界に突然滑り込んできたそれに、対応が遅れた。女が嬉しげに舌なめずりをする。右手を振りかざした。後ろへ身を倒すが間に合わない。
 鋭い爪が、虎牙の腹をえぐった。異物が入り込んでくる不快感と共に、熱が生まれる。瞬き一つの間もないうちに、激しい痛みが傷口を蝕んだ。
 渾身の力で逃れる。後退したが足に力が入らず、背中をしたたかに打ちつけた。手のひらで反射的に押さえつけていた箇所からは、生温かい血が滲み出している。尋常でない量の脂汗が噴き出した。
「坊やったら、余所見しているからこうなっちゃうのよ。それとも、私の言っていたことが図星だったのかしら?」
 軽やかな足取りで、女はこちらへ歩いてくる。裙子の裾が踊るようにひらめき、さながら死を呼びよせる踊子の手のようにも見えた。
 虎牙は額の圍巾を剥ぎ取り、腹を乱暴に締め上げた。おざなりではあるが、ある程度の止血はできるだろう。しかし、痛みで集中力が拡散してしまっている。これはまずい。攻撃は持って、あと一撃。汗を手で拭い、呼吸を落ち着ける。
「まあ、いいわ。強気なのはどうやら、あなたの一族に共通のことらしいし……李の家、ね。召喚の力は厄介だから警戒していたのだけれど、よかった。このまま喰って、私の糧にしてあげる」
 朦朧としかけた意識が、一気に覚醒した。
「お前、李家が何だって?」
「あぁそうだわ、忘れていた。あなたは自分の家を何も知らないのよね。知らないまま死ぬのはさすがに可哀相よね。いいわよ、ちょっとだけ教えてあげる」
 虎牙はゆっくりと身を起こし、体勢を整えた。いつでも飛び出していける。いつでも攻撃できる。
「李家は召喚の家。違う世界から獣を呼び出し使役する力を持っている。だから別な意味で、妖狩とは警戒されていたの。もっとも、李家の召喚術は才能に左右されていたから、使えるものはごく限られていたみたいね」
 離散しようとする集中力を必死にかき集め、虎牙は女の言葉を胸に刻みつける。召喚術を使う、李家。これで大分家が絞れるはず。
 痛みが麻痺してきた。一度覚醒した頭は、再び朦朧とし始めている。唇を噛み切り、意識を失わないように踏みとどまる。まだ気絶はできない。するわけにはいかない。
「最近全滅したと聞いたけれど、こんなに可愛らしい生き残りがいたなんてね」
 舐めるように虎牙を眺め、女は歩を止めた。距離はわずか三歩しかない。
「私って親切よね。ここまで親切な妖魔はそうそうにいないわ。感謝なさい。あなたはようやく出生が知れたのだから、幸せでしょう? 安心して、じっくり苦しみを与えて殺してあげるから。あなたの後ろにいる妖狩共々、ね」
 とっさに虎牙は後ろを振り向いた。黒幻の傍に寄っていたのか。女の気配が動いた。虎牙も同時に動いた。腕を引き寄せ、抱え込む。背後で硬いものが粉砕される音がした。目をやれば、柔らかな指先が亀裂から抜き取られたところであった。欠片が絶え間なく散り、粉塵が立ち込める。
「うふふ、往生際の悪い虫けらね。もういいわ、次で死んでちょうだいな」
「俺は往生際が悪いことで有名だからな。死ぬのは柄じゃないんでね」
 何とか軽口をたたくも、染み出る血の量を減らすことはできない。
 終わらせなければ。黒幻を横たえ、顔を覗き込む。あれから泣いたのだろうか、頬には涙の新たな跡が残っていた。
「黒幻」
 あえて、名だけを呼んだ。
「あいつを、殺す」
 聞こえているのかは判断できない。もしかしたら、聞こえてすらいないのかもしれない。それでも、虎牙は呼びかけをやめなかった。
「もしもお前が狂ったら、俺はお前を殺す。殺して、一生償えねぇ罪背負って苦しみながら生きる」
 力なく開かれていた指先が、かすかに震えた。
「お前が壊れなかったら――……」
 一つ、二つ、息を溜める。心の内側で何度となく自問してきた、その答えを改めて、声に乗せて確認する。
「今までお前がしてきたことを、一生かけて後悔させて償わせてやる」
 答えたかったのだろうか。空気が擦れる、音がした。何を言いたいのか、虎牙には分からなかったけれども。
「……お前が言った『止めてくれ』っての、俺は確かに聞いたからな」
「遺言は済んだ? さあ、私にその力、食べさせてちょうだい」
 虎牙は女へ体を向ける。足からはもう力が抜けて、立っているのがやっとだった。視界も徐々に霞がかってきている。意識だけが明澄としていた。足下には黒幻がいる。目前には女がいる。
 腹に激痛が走る。熱された鉄の楔を打ち込まれているようだ。はらわたがこぼれているかもしれない。これが最後。生きるか死ぬか。
 否――虎牙は不敵に笑った。自分が死ぬはずなどありえない。生きると宣言してやったのだ、裏切るのは気分が悪い。
「冗談じゃねえ。俺は、生きる。だからあいつも、生きるんだ」
 女が飛び込んできた。先ほどと同じ手法だ。懐にもぐりこみ、今度は心臓を狙っている。血をまとう爪が翻った。
 虎牙はあえて大きく踏み込んだ。力んだ腹の傷が裂けたのが分かった。腰を深く深く折り、体重を踏み出した右足にかける。妖魔の手が左の肩に食い込んだ。新たな痛みが突き立つも、致命傷にはならなかった。
 女の目に、初めて焦りが浮かんだ。しまった、と声もなく呟くその胸へ、虎牙は右手を叩き込む。胸を穿ち、突き破る。悲鳴すらあげず、女は身を反らせて激しく痙攣した。図らずして龍牙と同じことに嫌悪を覚えつつ、虎牙は腕を引き抜き体を離した。案の定、皮膚は汚れていない。
 女の姿が崩れ、別の生き物へと変じていく。張りのある肌はこそげ、豊かな髪も抜け落ち、灰になって消えてゆく。
 自分が命を絶ったものは妖魔だった。人間ではない。その事実に少しだけ、安堵する。
 倒れるときに外れたのだろう、かんざしは血に浸かることなく近くに転がっていた。拾い上げる。金の透かし彫りがされた、見事な一品であった。板が触れ合い、しゃらしゃらとささやきを奏でる。
 忘れていた痛みが蘇り、虎牙は呻きながらうずくまる。圍巾を一度取ろうとしてみたが、何かが布に貼りついている感覚があった。剥がさないで隙間から覗いてみる。想像通りというか予想通りというか、傷口から何かがはみ出しているのが見えた。
「……くそ、あの野郎」
 眩暈が酷くなっている。血が大量に失われたためか、真っ直ぐ歩くこともままならない。だが、立ち止まっているわけにはいかなかった。
 黒幻に返してやらなければ。思い立ち、首を後方へ巡らせる。大分時間が経っていたのだろう、陽は朱に染まり光を投げかけている。
 その朱の輝きを浴びながら、黒幻は立っていた。二本の足で道を踏みしめて、じっと虎牙を見つめている。視線が感じられる。ということは、意識がある。歩み寄ってきた。当然だが、痛みで立つこともできない。座ったまま、虎牙は黒幻を凝視するしかなかった。
 音も無く、しかし確かな足取りで近づいてくる。かすかな息遣いが聞こえるほど近くまでやってきて、彼は虎牙の前に膝をついた。
「……傷は」
「あ、おう……大丈夫だ、こんなの」
 呆然としながら、生返事を返す。彼が相手の傷を心配する台詞など、悪い夢を見ているような心地がする。
「それを」黒幻の言葉は続く。「……どうして」
「何だよ。妖魔が持ってたから取り返したんだよ。文句あるか」
 また斬られるのではないか。嫌な危惧を抱きながら、虎牙は乱暴に黒幻へかんざしを突き出した。
「早く返せってんだろ。ほら、てめぇの大事なものなんだ、ちゃっちゃと持ってけよ」
 にらみつけても黒幻は無表情のままだ。幾たびか、呼吸が重なる。相手に心音すら聞かれそうなほど静かだった。遠くを駆ける風の音が、獣のうなりにも似た声で通り過ぎていく。
「お前の誓いを、聞いた」
 沈黙に、ぽつりと波紋が落とされる。
「お前の言葉を、夢と現の狭間で聞いた」
 虎牙の手の甲に、暖かなものが落ちた。雫を散らし滑っていくそれは、目前にある蒼から溶け出して流れ落ちていく。
「生きろと言われたのは、生涯で二度目だ」
 穏やかに紡がれる音と決して多くない言語の羅列を、虎牙はただ呆然と受け止めるしかなかった。
「だから」
 宵の名を持つ男が、かすかに微笑った。
「――ありがとう、虎牙」
 零れた一言に、虎牙はひどくうろたえる。黒幻の口からそんな言葉が出るなど、一体何があったというのだろう。しかも名前を呼ばれた。何かされる前触れなのだろうか。
 こんな声は聞いたことが無い。凍った声もたたきつけられる言葉も、こんな風ではない。こんなに表情は見たことが無い。冷笑でも嘲笑でも自嘲でもない、純粋な笑みを見たことが無い。
 口上を聞かれた恥ずかしさも相まって、虎牙はさらに戸惑った。
「ど、どうしたお前? 頭打ったか?」
 動揺を誤魔化すために問い掛けてみる。声が不自然に上ずって格好がつかない。そういえば横たえたとき、ちょっと鈍い音がしなかったか。したかもしれない。そのせいか。絶対そのせいだ。丁度いい、後で腹の傷を診せるときに連れて行って看てもらおう。
 混乱している虎牙を他所に、黒幻は柔らかに笑んでいる。
「人間も捨てたものではないと……少しだけ、今は少しだけ、信じたい気持ちになった。それだけのことだ」
 かんざしが、手から離れる。光を弾く妻の形見を、彼は静かに抱きしめた。
「……ありがとう」
「あー……あー、おう。まあな。いいってことよ」
 素直に言われるのがくすぐったくて、虎牙はとっさに目をそらした。
 狭い空は晴れて、燃え上がる朱に染められつつあった。

(投稿日:2007.7.14 最終訂正:2008.3.25)

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